商標法53条を読んでいて疑問に思ったこと
禁止権の範囲の意味合いがよくわからない
どうもニシジマです。短答試験の勉強で白目になっております。あっ、結論だけ知りたい方は最後に結論書いてるので読み飛ばしてください。
商標法53条の取消審判の概要を説明すると、”ライセンシーが商標権の専用権又は禁止権の範囲を使用することで、誤認・混同・劣悪を起こした場合に、取消審判によって取り消される。“という内容です。
まあ釈迦に説法ですが、商標法53条を取り上げてみます。ちなみにこちらの話は1年前に問題を解いていた時にも生じた疑問だったので、ブログ記事を書いております(短答過去問に物申す。商標法53条の範囲ってどこやねん?【弁理士試験・過去問H22-46(2)】)。
専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。
商標法53条1項
太字にした部分なのですが、これは専用権又は禁止権の範囲を表しています。私はこの条文を読んだときにこのように思いました。
甲が商標権者であり、甲は商標X指定商品「a,b」という商標権Aをもつ。甲は乙に指定商品aの範囲についてのみライセンスし、乙は通常使用権者となった。
この場合、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標というのは、商標権Aの専用権又は禁止権の範囲(=指定商品a及びbの類似範囲まで)のことを示すと思っておりました。
この考え方は間違ってる?
しかし、予備校のある問題で、こういった解説がありました。
商品「a」及び「b」を指定商品とする登録商標について、「a」についての使用許諾を受けた通常使用権者が、「b」について当該登録商標の使用をしたことにより他人の業務に係る商品と混同を生じさせたとしても、当該商標登録が、使用権者の不正使用による商標登録の取消しの審判(53①)により取り消されることはない。
→×(∵ 「a」と「b」が類似する場合、「b」についての当該登録商標の使用は禁止権の範囲での使用となるため、53①の審判の対象となる。)
予備校のテキスト(商標法2022)引用
私の考え方に沿ってこの問題を解いてみても×になります。しかしながら論理が解説とは異なるのです。私がもしこの解説を書くとするならば、
→×(∵ 「b」についての当該登録商標の使用は専用権の範囲での使用となるため、53①の審判の対象となる。)
と書くわけです。まあつまり、解説の考え方は、”ライセンスされた範囲(a)から見て“bは禁止権であるという表現なんですね。私は”商標権全体から見て“という考え方なわけです。
この解説を裏返して言えば、aとbが非類似商品である場合は取消審判の対象とならないということを言っているようなものなのです。この解説を見て、私は”どこから見て”専用権又は禁止権なのか?という疑問が沸いてきました。
X(Twitter)で聞いてみた結果
アンケート結果
X(Twitter)でたくさんの弁理士の方、合格者の方、受験生の方からご回答いただきました。また、アンケートでは56件も投票いただきました。ありがとうございます。まずは、アンケートの結果から申し上げます。
アンケートでは、取り消されるという回答が優勢でした。つまり、私の考えが優勢。次に、弁理士の方々の回答ですが、たくさんのリプライを頂いたものの、こちらに載せるべきか悩みましたので、簡単にだけ紹介します。
商標権者にとって酷に失する派
この53条の取消審判は実は裏メニュー(というほどのものでもないですが)があって、商標権者がライセンシーに対して”相当の注意”を払っていた場合、取消を免れることになっています。この”相当の注意”というのは結構厳しいハードルらしいのですが(つまり、かなりの注意を要する。「劣悪じゃない!?あかんよ~!」って一回言っただけとかではダメ。)、そうは言ってもライセンスした範囲を超える部分(今回の事例の場合b)にまで相当の注意を張り巡らされるのは商標権者にとって酷であろうと。つまり、ライセンスをしたaについては監視をすべきだけど、ライセンスをしていない部分に関してまで監視を要求するのは酷に失するので、そこまでは要求しない。よって、取消は免れるであろう。
という見解でした。
公益的見地による第三者の目線に立った人権派
公益的見地に立った”優しい”弁理士の皆さんのご意見はこちら。2級知財管理技能士を取得した専門家()として矜持をもって私の意見を述べさせていただきます。
まあ確かに商標権者にとって酷に失する派の意見はわかる。一理あるだろうと。だがしかし!!!第三者にとっては、ライセンスされた範囲がaだろうがbだろうがそんなことは関係なくて、ライセンシー(通常使用権者)がわけのわからん使用をしていたことにより、消費者(=第三者)が物を買う時に誤認等をしてしまうという危険性、世の中に対する損失を考慮した時にこれは取り消すべきであろうという意見でした。
予備校のチューターさんにも聞いてみた
私の質問内容
テキストの解説を踏まえて、持論を捻じ曲げてテキストに沿った(い)ですか?という聞き方をしてみました。
チューターさんの回答
(あ)に該当すると思われます。あっそうなん?やっぱり、ワイの考え方が正しいやん?ほなテキスト間違えてる?と思って再度質問をぶつけてみました。
私の再度の質問
チューターさんの回答
なるほど。つまりはテキストが誤っているとの回答でした。
特許庁にも問い合わせてみた。
あまりにプロの弁理士の方でも意見が分かれるので、これは審判官や審判長に聞くしかないなと思い、特許庁に問い合わせてみました。
とのことでした。つまり、まあ今後、裁判が起きて文言の規定が決まるんじゃないんですかね。誰か非類似商品を指定商品として商標権取って片一方だけライセンスしてライセンシーさんに誤認商品作らせて取消審判起こさせて裁判やってみてください。お疲れ様です。晩飯食いながらバチバチ書き上げたけど疲れたわ。風呂入って明日に備えます…
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