大阪駅に+1Cの点電荷を置いたらどうなるか
どうもニシジマです。今日は物理の電場・電気力線・電気量の話をしていきたい。
物理の参考書や問題集を解いていると、よく+q〔C〕,−q〔C〕という点電荷によく出くわす。私も今日久々に物理の参考書を開いていて偶然、”+1Cの電荷を帯びた粒子”というものに出くわした。
+1Cと聞くと,何かめちゃくちゃ小さな値のように聞こえるんだけど,色々考えていくと+1Cめちゃくちゃ大きい値を表しているのだなと思ったので今日はその話をしたい。ちなみにニシジマは物理が専門でやっているわけじゃないので,もし誤りなどがあればtwitterやブログのコメント欄で教えて欲しい。
100 km先をも貫く電気力線
ここで+1Cの点電荷Aについて考えてみたい。この+1Cの点電荷Aからr〔m〕離れた点の電場は次のように表すことができる。
E=k/r2 (kはクーロン定数:9.0×109〔N・m2/C2〕)
つまり,点電荷Aから例えば100 km離れた場所の電場E=9.0×109/100002=0.9〔N/C〕となる。これは100 km先にでも0.9 本/m2(1m2あたりほぼ1本程度)の電気力線が存在するという意味。
つまり,+1Cの点電荷を大阪駅に置くと,姫路・四日市・伊勢あたり(三重や兵庫)にまでこの+1 〔N/C〕の電場が生じることになる。関東でいうと,+1Cの点電荷を東京駅に置くと,宇都宮のあたりに+1〔N/C〕の電場が生じるイメージ。
なんとなく思い描いていた感覚と全然違うのでは?と思う。たかだか+1〔C〕なんて思っていたかもしれないが,+1〔C〕の電荷を帯びたパチンコ玉を大阪駅に置くだけで,ちゃんと姫路・四日市・伊勢のあたりまで電場は生じるということである。やばい。
もう少し具体的に話をすると,+1〔C〕の点電荷を大阪駅に置いたときに,姫路・四日市・伊勢のあたりまでおよそ1m2あたり1本の電気力線が貫くことになる。
あなたが大阪駅に+1〔C〕の点電荷を置くと,姫路駅・四日市市にいる友人が1m2の板を掲げるとその板に1本の電気力線が貫いているということだ。そんな遠くまで電荷って影響を及ぼすんだなとまず不思議。無限遠って100 kmごときのことを言っているわけではないのである。
たった+1Cの点電荷がシャレにならない弾丸を生み出す
そうは言っても,「電気力線1本で何ができるねん!?」って反論したくなる気持ちもわかる。そこで,このたった1本の電気力線がいかにすごいことなのかを説明したい。
電気力線が1m2あたりに1本貫くということは,つまりその場所の電場E=1〔N/C〕ということになる。つまり,大阪駅に+1Cの点電荷を置くと,姫路駅・四日市・伊勢のあたりには電場E=1〔N/C〕が発生する。
あなたが大阪駅に+1〔C〕の電荷を置いて,姫路駅に住んでいる友人が質量5 gの−1Cの電荷を帯びたパチンコ玉を置いたとする。するとそのパチンコ玉はどのくらいの加速度aをもつだろうか。
姫路駅の電場E=1〔N/C〕なので,点電荷Aによって生じるパチンコ玉の引力F=qE=1〔N〕となる。
F=maより,姫路駅にそっと置いたパチンコ玉の加速度aは次の通りとなる。
1=5×10−3×a ⇔ a=200 m/s2
つまり,友人が,たったの−1Cの電気量を帯びたパチンコ玉を姫路駅にそっと置いた瞬間,そのパチンコ玉は突如200 m/s2の加速度を持って動き出す。弾丸どころの話ではないと思う。しかもこれは速度ではなく加速度なのである…。恐ろしい。
およそ1秒後には200 m/sの速度をもつパチンコ玉が姫路からガーーーーっと大阪駅に向かうわけである。怖すぎる。そして,2秒後さらに加速されて400 m/s以上の速度をもつことになる。
ちなみに電場Eは大阪駅に近づくほど大きくなるので,加速度も徐々に上がるはず。なので,2秒後には400 m/sは余裕で超えていて,3秒後には…クーロン力恐ろしい…。
つまり,±1 Cというのは,何となく”1”という数字でそんなに大きくないような気もしているんだけど,実際はとてつもなく大きい値なのだなということを実感する。というかそもそも”1″という数字は電気量において何らきりの良い数字ではないということなのである。電気素量の n 倍という話なので。
点電荷って実在するの?
+1Cの点電荷とか−1Cの点電荷というようによく物理の参考書・問題集を読んでいると見るんだけど,そもそもで今まで説明してきたようなやばい点電荷って存在するのかな?という気がしてきた。もちろん点電荷というのは仮想的にそう考えるものではあるんだけど,さっき具体例で説明していたようなパチンコ玉に+1Cの電気量を載せることなんて可能なんだろうか。
こういう話はもはや物理は専門じゃないし,特に何か詳しいわけでもなく,今日もこの記事は参考書をぼーっと読んでいるときに思ったことを書いてみただけなので何もわからないけど,よく考えると+1Cという値は非常に大きい。
どれくらい大きいかというと,電気素量(電子e⁻1粒がもつ電気量)が96500/6.0×1023=1.6×10−19〔C〕なので,1Cというのは,1/1.6×10−19=6.25×1018〔粒分〕の電子e⁻がもつ電気量なのである。この電気量をパチンコ玉の大きさに載せたら単純にめちゃくちゃ反発しそうな気がするけどどうなのかその辺はよくわかりません。そう思うと+1Cの電気量をもつ点電荷なんて普通はあり得なくて実際は結構でかい物質にうっすらと電荷を帯びさせているイメージなのかなと思ったり。よくわかりませんが。
さっきの話で出てきたように電荷をもつパチンコ玉がシャレにならない速度で迫ってくるくらいに強いクーロン力なんだから,きっとクーロン力というのはそれなりに強い力で結合しているんだろうなと想像できると思う。もちろん,イオン結合する粒子というのは例えばNa+とかCl−というように一粒一粒がもつ電気量が1Cから比べるとはるかに小さく,いわゆる電気素量と同じ値になるので,そんなに強いパチンコ玉のイメージからはかなり遠ざかるのは事実だが,電気素量が小さい割にはクーロン定数のおかげで大きい値なのだろうと思う。
- NaClの格子定数=5.64×10−8〔cm〕
- Na+とCl−のイオン間距離=2.82×10−8〔cm〕
- Na+とCl−の2つの粒子が互いに引き合うクーロン力はF=k×Qq/r2=9.0×109×(1.6×10−19)2/(2.82×10−8)2 =(10−27のオーダーになるのでめっちゃ小さい)
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